宇宙線と呼ばれる宇宙から飛来する高エネルギーの粒子を用いて、宇宙や地球についての様々な研究を行なっています。
宇宙線によって生成され、地上に降り注ぐミューオンという素粒子を用いると、その高い透過性からレントゲン撮影のように巨大な構造物や地下の内部構造を透視することができます。この技術はミュオグラフィと呼ばれ、火山やピラミッドの透視に使われています。我々は地下を透視可能な技術を開発し、地震断層の透視に挑戦するなど、地球科学への応用に取り組んでいます。
また宇宙線は宇宙の情報を持って地球に飛来しますので、宇宙線を観測することで宇宙を知ることができます。宇宙の極高エネルギー現象の謎を解明するため、極高エネルギー宇宙線の観測実験や、次世代の宇宙線検出器の開発を進めています。
(1) 宇宙線ミューオンを用いた地震断層の透視に取り組んでいます。地下で測定を行なうために、ボアホールと呼ばれる直径10cm程度の穴に埋設可能な小型のミューオン検出器を開発し、岐阜県飛騨市に位置する跡津川断層を貫くボアホールにおいて断層を観測しました。断層の姿勢や形状を把握することで、より現実的な地震・津波の被害予測ができると期待しています。
(2) 宇宙線の中でも極めてエネルギーの高い、極高エネルギー宇宙線が地球に飛来していることは観測されていますが、膨大なエネルギーを持った粒子が宇宙空間のどこで、どのように生成され、地球に飛来するのか分かっていません。極高エネルギー宇宙線は山手線の内側の面積に10年に数個程度しか飛来しないため、詳細に調べるためには数多くの検出器で大面積を覆うことが必要です。そのためフレネルレンズを用いた宇宙線望遠鏡や、アンテナで検出可能な電波的手法など、安価な次世代宇宙線観測手法の開発に取り組んでいます。
図1: 地震断層透視用に開発した小型ミューオン検出器の内部
図2: 米国ユタ州に設置したフレネルレンズを用いた宇宙線望遠鏡の試作機