すべての物質は原子でできているといわれますが、現代物理学ではさらに究極的な基本構成要素として、17種類の素粒子が知られています。そのなかでもニュートリノはまだわかっていないことも多く、素粒子物理学の主な研究対象の一つです。
一方、広大な宇宙に目を向けると、138億年前の宇宙誕生・ビッグバンから現在に至る進化の過程で、なぜもともとは物質と同じ量作られたはずの反物質が消えて、物質だけで構成される宇宙になったのかという問題は大きななぞとして残っており、その解決のカギをニュートリノが握っている可能性が示唆されています。
本研究室ではその素粒子・ニュートリノの研究を進めています。
(1) ニュートリノには3種類(電子型、ミュー型、タウ型)あることが知られています。近年、これらの種類が移り変わるニュートリノ振動という現象が発見され、その存在はニュートリノが質量をもつ証拠となるため、注目を集めました。しかし、ミュー型からタウ型への変化はタウ粒子の寿命が約0.3ピコ秒と短く、直接的確認は困難でした。私たちOPERA実験グループは特殊な写真乾板を用いた検出器を、ミュー型ニュートリノ発射装置のある欧州原子核研究機構CERN(スイス)から730km離れたグランサッソ地下研究所(イタリア)に設置して、振動の結果現れたタウ型ニュートリノの反応を観測することに成功しました。
(2) さらに現在、NINJA実験グループはその技術を応用して、ニュートリノ・原子核反応の基礎的特性の解明を目指し、日本のJ-PARC実験施設で精密測定実験を行っています。
図:写真乾板に記録された高エネルギー陽子と原子核の反応