宇宙に存在する質量の大部分は、暗黒物質と呼ばれる目に見えない正体不明の成分であることが知られています。この暗黒物質はまれに消滅・崩壊を起こして、宇宙空間にほとんど存在しない反粒子を生成すると考えられています。
太陽系外から飛んでくる反粒子のうち、未発見の種類を捉えることができれば、それが暗黒物質に由来している可能性があります。この反粒子を、大気のほとんどない地球上空で捉えるための実験装置の開発を進めています。加えて、宇宙環境での利用を想定した測定器システムの研究や今後の宇宙観測に用いる機器の基礎開発を行っています。
宇宙から飛んでくる粒子(宇宙線)を測定するため、国際宇宙ステーションや高高度観測気球を利用した実験およびその装置開発を行っています。これまでに、国際宇宙ステーションからの観測のため、宇宙環境に耐えることのできる装置の開発を宇宙航空研究開発機構(JAXA)や他大学と共同で行ってきました。また、現在は南極上空35km以上を周回する観測気球に搭載する測定器の開発を進めています。この観測では、暗黒物質に由来する反粒子、特に反重陽子の検出が期待されます。
直接は目に見えない粒子の測定には、その衝突によって光や電気信号を発生させる素材を用います。装置の開発として、測定器や信号処理回路の製作およびその性能評価を行っています。また、粒子の引き起こす反応を計算するコンピュータシミュレーションを用いた観測装置設計の最適化、ディープラーニング等を応用したデータ解析手法についても研究しています。
図1: 南極周回気球に搭載する宇宙反粒子測定器GAPS(General AntiParticle Spectrometer)
図2: コンピュータシミュレーションで計算した、宇宙から到来する粒子の反応の様子