ホウ素(B)、炭素(C)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)など軽元素の共有結合性ネットワークからなる物質のなかには、原子間の共有結合がもつ結合異方性に起因するケージ構造やチューブ構造をした物質が多く存在します。例えば、単層カーボンナノチューブは炭素原子の共有結合からなる六角形格子構造のグラフェンシート1枚をチューブ状に巻いた構造をしており、その内部に直径1ナノメートル程度の空洞(細孔)をもっています。
当研究室では、このようなネットワーク状の構造をもつ物質の電子物性を調べる研究や、それらがもつ細孔を利用した新しい物質の開発とその新奇な物性や機能性の探索に取り組んでいます。
(1) カーボンナノチューブなどのナノカーボンを電子デバイス、ガスセンサー、太陽電池、燃料電池などの材料として用いるために必要となる基礎的な電子物性を核磁気共鳴(NMR)で調べています。
(2) ナノスケールあるいはサブナノスケールの細孔をもつ多孔質材料は、その細孔内部の空間を利用することで、まったく新しい物性を出現させることができます。例えば、絶縁性の多孔質体材料であっても、その細孔内部に分子や原子を内包させることで金属化することもできます。また、酸素などの磁性分子を細孔に内包させることで新しい磁性体材料の合成や、極性分子を内包させることで新しい誘電体材料の合成が可能です。これら多孔質材料を用いた機能性マテリアルの開発と、その物性を調べる研究に取り組んでいます。
図1: 物質の電子状態や分子の運動状態などを調べるための核磁気共鳴(NMR)実験装置
図2: メタン分子を内包したカーボンナノチューブの計算機シミュレーションの様子