人類にとっていまだ未知の領域である宇宙。そこには解き明かされていない謎と無限の可能性が存在します。宇宙をさまざまな方法で観測することは、わたしたちの未来を見つけることなのかもしれません。
みなさんは超新星爆発という言葉を聞いたことがあるでしょうか。太陽よりも大きな、およそ10倍以上の質量を持つ恒星が、その一生を終えるときに起こす爆発。それが超新星爆発です。
銀河系内では100年に1回ほどの確率で起きると言われている超新星爆発は非常に明るく輝き、歴史書にも「昼間でも見えるような明るさだった」という記録が残るように、時に肉眼でも観測できるほどの現象です。
超新星爆発に関連して起こる現象は宇宙観測の大きなテーマとなっています。
電波からガンマ線までの様々な波長の光(電磁波)を周期的に放出するパルサー天体は、自然現象とは思えないほぼ正確な周期的な信号を放出しているため、発見当初、知的生命体による通信ではないかという説も存在しました。
現在では超新星爆発の際、恒星の中心核が重力により圧縮されて生まれた、高速で自転する中性子星であると考えられています。
神奈川大学ではチベットや南米ボリビアの標高4km以上の高原に多数の観測装置を展開し、非常に高いエネルギーを持ったガンマ線の測定を行うことで、パルサー天体の特異な現象を解明する研究を行っています。
宇宙空間を飛び交う、人工では作り出せないようなエネルギーや速度を持った粒子である宇宙線。これは超新星爆発後に発生するプラズマ状の星間物質である超新星残骸が、高速で広がっていく過程の衝撃波によって生み出されたものだとする説が有力と考えられていますが、未だ解明されていません。この宇宙線の起源を探るため、国際宇宙ステーションに搭載した装置での観測を行っています。
太陽系の外からやってくる宇宙線は、電子機器を劣化や誤動作させることが知られており、人工衛星を損傷させる一因となっています。さらに、地球の大気へ衝突すると粒子を大量に生成し、航空機に搭乗する人を被ばくさせることが知られています。その粒子の中には非常に高い透過性を持つものがあり、直接観測することの難しい地下深くの地震断層や火山の観測などへの利用が期待されています。
神奈川大学工学部応用物理学科では、
さまざまな角度から宇宙に関わる観測・研究を行っています。
ご一緒に
未知なる宇宙
を知るための
冒険へ出てみませんか。
宇宙について総合的に学ぶ「宇宙観測プログラム」の最初の科目として、宇宙に関連する自然科学から科学技術の概要を学びます。
地球を含む太陽系から、星や銀河などの天体を対象とする天文学、宇宙の成り立ちや宇宙空間で生じる高エネルギー現象を扱う宇宙物理学に加えて、ロケットや人工衛星などに用いられる宇宙技術、超高真空や微小重力といった地球上では実現困難な条件を活用する宇宙環境利用まで、最新の研究トピックを紹介しながら幅広く取り扱います。
太陽系と惑星、恒星と銀河といった天体から始まり、超新星爆発などの高エネルギー物理現象、ビックバン・インフレーション宇宙といった現代宇宙像など、宇宙物理学の主要なテーマについて解説します。
宇宙がどのように進化して現在の姿となったのか、初期宇宙の元素合成から銀河・銀河団の形成に至るまで、物理学の視点から学んでいきます。また、様々な波長の電磁波や高エネルギー粒子を用いた観測技術や最新の観測結果についても紹介します。
地上で実現できる粒子エネルギーの100万倍を上回る超高エネルギー宇宙線の起源(活動銀河核、衝突銀河など)を解明するため、超高エネルギー宇宙線が大気に衝突したときに生じるシャワー状の粒子群を地表検出器アレイで測定すると同時に、粒子シャワーが大気中を伝わる際に発生させる蛍光(紫外線)を大気蛍光望遠鏡で捉える研究を行っています。
銀河系の外からやってくる超高エネルギー宇宙線は極めて存在量が少なく、観測には広大な面積の観測装置が必要となります。そのため、アメリカユタ州の砂漠地帯に、1.2 km間隔でたくさんの地表検出器アレイを配置して、これらの周囲に3つの大気蛍光望遠鏡を配置し、約700km2におよぶ面積をカバーしています。
宇宙空間には、質量はあるのに目には見えない物質があり、暗黒物質と呼んでいます。暗黒物質は、その粒二つが宇宙空間で衝突すると消滅する、あるいはときどき自然に崩壊することで別の種類の粒子を生み出すことがあると考えられます。
この時、生じる粒子の中に反粒子と呼ばれる、私たちのよく知る通常の粒子とは逆符号の電気を帯びたものが含まれます。反粒子は、通常の粒子と出会うと消えてなくなりエネルギーを放出する特徴を持つ、自然界では希少な粒子があり、この粒子を観測することで、未発見の素粒子とされる暗黒物質に迫ることができます。
観測は大気のほとんどない地球上空で行う必要があるため、国際宇宙ステーションや南極成層圏気球に搭載する測定器を開発して、暗黒物質の正体を探る研究を進めています。
地球と宇宙を近づける革新的な技術として注目される宇宙エレベーター。気象衛星などでよく使われる、赤道上空の高度約3万6000kmの静止軌道にステーションを打ち上げ、そこから上下にひも(テザー)を伸ばすことが必要になるのですが、このテザーを実現するためには強さと軽さを両立した素材が必要でした。
これまで構想はありながら実現困難と思われていた宇宙エレベーターですが、ナノサイエンスの発展により生まれたカーボンナノチューブの発見により、実現性が大幅に向上しました。近い将来、宇宙へ人やものを運ぶのは宇宙エレベーターになっているかもしれません。